鑑賞眼

浅草公会堂「新春浅草歌舞伎」 真摯に挑戦、頑張れ七福神

 恒例の花形俳優たちによる華やぐ舞台。尾上(おのえ)松也29歳を座頭に中村歌昇(かしょう)、坂東巳之助(みのすけ)25歳、中村児太郎、中村種之助、中村隼人、中村米吉ともに21歳、オール20代が勢ぞろいした。

 若い。初々しい。甘い。かわいい。筋書きも7人の素顔姿満載でアイドル写真集のよう。三十数年前より若手の飛躍の場だった浅草歌舞伎も変わった。今年は幼さが前面に出た。うーん、とため息もつきながら、一層の精進を期待しつつ、真摯(しんし)に挑戦する舞台姿には好感度で胸いっぱいになる。中村歌女之丞(かめのじょう)、中村吉之助、中村芝喜松(しきまつ)、中村芝(し)のぶ、ほかの助演を得て頑張るさまを七福神になぞらえ、楽しんだ。

 第1部。「春調娘七種(はるのしらべむすめななくさ)」と「独楽売(こまうり)」の2題の舞踊に挟まれた「一條大蔵譚(いちじょうおおくらものがたり)」から「奥殿」。源氏方の忠臣、吉岡鬼次郎(きじろう)の松也、きりっとしているが、台詞(せりふ)、表情が平淡。メリハリが欲しい。女房、お京の児太郎が抑制効いて良い。赤姫よりぐんとさえる。米吉の常盤御前に母の女の哀れと強さは苦しい。歌昇の大蔵卿が立派だ。作り阿呆(あほう)と真顔の変わり目が激しく、はっとして緩む。

 第2部。「仮名手本(かなでほん)忠臣蔵」5、6段目を出して、みな幼いが、意欲、昂(たかぶ)りが伝わる熱演。松也は山崎街道の勘平をきれいに見せ、与市兵衛内の切腹に至る過程で芝居心があふれる。隼人の千崎弥五郎が画然さ、巳之助の定九郎に研究の跡がそれぞれある。児太郎のおかるが切ない。歌昇が不破数右衛門(ふわかずえもん)。舞踊「猩々(しょうじょう)」と「俄獅子(にわかじし)」が付く。26日まで、東京・浅草公会堂。(劇評家 石井啓夫)

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