懐かしの道具で認知症予防を 和歌山市立博物館に「回想法」コーナー

 白黒テレビや黒電話、炭火アイロン-。和歌山市湊本町の市立博物館で開かれている昔の生活用品を集めた冬季特別陳列「歴史を語る道具たち」で、高齢者が懐かしい品に触れることによって、認知症などの防止効果が期待されている「回想法プログラム」のコーナーが設置され、注目を集めている。3月1日まで。

 回想法は、米国の精神科医が1960年代に提唱した認知症などに対する非薬物療法の一つ。高齢者らが昔の道具に触れることで、懐かしい記憶や楽しかった思い出を振り返り脳が活性化し、認知症の予防や進行を遅らせる効果があるとされる。

 博物館と福祉の連携として全国的にも注目され、愛知県北名古屋市の「昭和日常博物館」や、富山県氷見市の「氷見市立博物館」が取り入れるなど、特に地方で広がりを見せる取り組みとなっている。

 市民らから寄贈された生活用品や農具などを所蔵している和歌山市立博物館では、小学3、4年の社会科単元に対応。毎年、昔の生活用品の展示を行ってきたが、今年は、同館の職員が回想法に着目、福祉施設の高齢者らを対象に展示物に触れる特別コーナーを新たに設置した。

 これまでに認知症患者のデイケアを行う施設の利用者らの団体が来館。引き出しを開けると音が鳴る「ハーモニカタンス」や昭和30年代の白黒テレビなどに触れ、蓄音機で音楽を聴いて「懐かしい」と声を弾ませたという。

 同館の近藤壮学芸員は「問い合わせもあり、好感触。和歌山は高齢化も深刻なので今後も続けていきたい。認知症の方だけでなく、家族やお孫さんと来てもおもしろい内容です」と話した。

 午前9時から午後5時(入館は午後4時半)。回想法プログラムの利用は予約が必要。月曜休館。一般・学生100円、小中高生無料。問い合わせは同館(電)073・423・0003。

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