また、国際放送の重点地域を北米とアジアに設定し、大型ニュース番組の新設などを通じて浸透を目指す。国際放送費は、今後3カ年で100億円ほど増やす方針だ。井上樹彦理事は「英BBCや米CNNに、いきなり追い付くのは難しい。ターゲットを絞り、一つ一つやっていく」と説明する。だが、一部の経営委員からは組織体制や運用について、「さらに踏み込んだ改革ができるはずだ」と、不満も上がっている。
一方、受信料収入は営業活動の強化で今年度予算比461億円増を見込み、老朽化が進む東京・渋谷の放送センター建て替えのため、240億円を積み立てる。ただ、建て替えの場所や費用はまだ固まっておらず、積立金の総額は26年度時点で既に1042億円にも達している。
NHKは、過去の経営計画で掲げた「受信料10%還元」を、景気低迷を理由に「7%値下げ」(24年10月~)に抑制した経緯がある。籾井会長は32年に向けた設備投資や国際放送強化、放送センター建て替えへの準備を理由に「当分、値下げはできない」との考えを示したが、増収分の「還元」をめぐる議論は今後、広がる可能性がある。(三品貴志)