高校公民教科書の戦後補償に関する記述で、教科書会社1社が「従軍慰安婦」と「強制連行」の文言を削除する訂正申請を行った。誤解を生む不適切な記述の是正は当然であり、訂正の動きを評価したい。
高校教科書ではほかにも日本史を中心に、慰安婦に関し不適切な記述がある。他の教科書会社にも早急な是正を求めたい。
訂正申請が行われたのは、数研出版の高校公民分野の「現代社会」と「政治・経済」の教科書だ。学説や事実関係の変化があった場合、自主的に訂正できる制度に基づき文部科学省に申請し、了承された。
政治・経済では「戦時中の日本への強制連行や『従軍慰安婦』などに対するつぐないなど」とした戦後補償問題の説明で、「強制連行」と「従軍慰安婦」の言葉を削除して表現を改めた。「強制連行」は実態と異なる不当な表現だ。「従軍慰安婦」は戦後の造語で慰安婦について誤解を生む。
高校教科書では、ほかにも日本史の慰安婦に関する説明で、「若い女性が強制的に集められ、日本兵の性の相手を強いられた」「女性のなかには、日本軍に連行され、『軍』慰安婦にされる者もいた」といった不適切な記述が問題となっている。
教科書検定で、慰安婦については、日本軍が強制連行したとする直接的な誤った文言はチェックされるものの、主語をあいまいにするなどして検定をすり抜けているのが実態だ。
慰安婦問題で国際的に広がった誤解を解くため、事実に基づく発信が求められているときだ。それだけに日本の教科書で、根拠のない誤解ある記述を放置してはならない。慰安婦募集の強制性を認めた河野洋平官房長官談話も教科書の記述に悪影響を残しており、当然、見直しが欠かせない。
児童生徒が使う教科書は、実証的研究に基づきバランスのとれた記述が、一般の図書以上に求められる。それにもかかわらず慰安婦問題のほか、南京事件で中国側が宣伝する荒唐無稽な犠牲者数をあげるなど、どこの国の教科書か分からないような記述が依然としてある。
近現代史を中心に、日本をことさら悪く描く自虐的な教科書の編集姿勢は国益を損なうものだと認識してもらいたい。