「昭和」の青春

第18話 荒井由実《ひこうき雲》「自殺」した親友へ…歌詞と重なる体験に思い込め

 昭和に初めて入ったのは、2011年4月28日のこと。子育ても終わり、新たな生きがいを模索している時期だった。日付まで覚えているのは、かつての天皇誕生日の前日だったからだ。

 「友達に誘われて訪ね、彼女の伴奏で《いちご白書をもう一度》(75年、荒井由実作詞作曲)を歌いました。この曲は私にはバンバンが歌ったというより、荒井由実の作品という意識のほうが強いですね。その日、ビートルズ・ナイトという企画が1カ月後にあることを聞かされ、2度目の訪問をしました。病みつきになったのはそれから。特に仕事が大変ときほど、ここに来て解放されたくなるの」

 誰もがそうであるように、小百合も昭和に通ううちに自分でもギターを弾きながら歌ってみたいと思うようになった。一昨年、ついに安物のギターを買って知人に教えてもらうようになった。50の手習いである。

 「いちばんやりたかったのは雪村いづみバージョンの《ケ・セラ・セラ》(J・リビングストン作詞、R・エバンズ作曲)でした」

 ヒチコック監督の映画『知りすぎていた男』(56年)でドリス・デイが歌い、世界中でカバーされるようになった曲である。ところが、知人はその希望を却下した。当然だろう。雪村いづみ版はジャズバンドをバックに歌っている難曲なのだから。その代わりに《なごり雪》(74年、伊勢正三作詞作曲)から始めさせた。知人のおかげで、いまではステージで立派に弾き語りができるレベルになっている。

 ところで、昭和に通うことについて家族はどう思っているのだろう。

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