家康を北極星に見立てる神格化の萌芽(ほうが)が垣間見える出来事で、「梵舜が神道の伝統にのっとり神格化への道筋をつけ、崇伝が日光遷座の設計図を描き、天海がそれを仕上げたという流れだったのでは」(高藤さん)。いずれにしても、綿密に計算された神格化であったことは間違いない。
戦国時代の研究で知られる静岡大名誉教授の小和田哲男さん(70)は「家康は260年を超える太平の世を実現しただけでなく、いわば右肩上がりの拡張主義だった戦国時代から低成長・安定の時代へと舵を切った。現代にも通じる部分がある」と話す。
冒頭に紹介した遺言は、「そして八州の鎮守となろう」と続く。家康の御霊は今も日光から江戸(東京)や関東、日本全体を見守っている。(宇都宮支局 原川真太郎)
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今年は家康の400回忌に当たる。世界遺産「日光の社寺」の中核をなす日光東照宮への改葬の道程をたどり、改めて家康の功績や影響について考える。