正月の風物詩「仙台初売り」に向けた準備が進んでいる。旧仙台藩由来の仙台初売りは豪華な景品がつくことで知られ、過剰な景品を規制している公正取引委員会も特例を認めているほど。仙台商人の心意気が年の始まりを盛り上げる。
仙台市青葉区の老舗茶屋の井ケ田(いげた)では27日、担当者が、福袋や商品券を購入した先着100人に配られる景品の「茶箱」にお茶や日用品などの商品を次々と詰めた。井ケ田の初売りは1月2日午前7時から始まる。
仙台藩では1月2日に城下の人にコメや塩を届けさせる「買い初め」という風習があったとされる。井ケ田では昭和10年、初売りのおまけに空の茶箱をつけたのが始まり。密封性の高い茶箱を衣類の保管箱として欲しがる人々が多かったという。その後、茶屋同士が競うように、布団や茶箪笥(だんす)といった豪華な景品をつけ、仙台名物となっていった。井ケ田の今野順子常務(59)は「茶箱は1年を気持ちよく過ごすための正月の伝統。仙台らしさを守っていきたい」と話す。
公正取引委員会の特例が定められたのは昭和52年。ある商品を購入した際のおまけや来店者へのプレゼントなどを「総付け景品」といい、当時上限は取引価格の10分の1(千円未満の場合は100円)までだった。旧仙台藩領域だけは正月三が日に限り、10分の2(千円未満の場合は500円)までの景品が認められた。平成19年に一般の景品も上限が10分の2にまで引き上げられたが、千円未満のメリットは今も有効だ。公正取引委員会東北事務所によると、宮城県のほか、岩手県南部、仙台藩外でも同様の風習があった青森県黒石市などが特例の対象となるという。
ただ、現在も仙台初売りの名残があるのは限られた地域のみ。宮城県北や岩手県南の商工会議所の担当者は「商店街も元気がなくなり、赤字覚悟の初売りは難しく、特例も知られていない」と口をそろえる。地方創生に注目が集まる中、仙台の元気が東北全体に広がる1年になるか、仙台初売りに期待が膨らむ。