回顧2014

川内原発 3月安全審査優先枠に決定 再稼働来春に持ち越し

 ■企業間競争激化 九電VS西部ガス JR九州VS西鉄

 この1年、九州・山口でも様々な出来事があった。数多くのニュースの中から、政治や経済、社会に大きな影響を与えたテーマをピックアップし、去りゆく年を振り返る。(津田大資)

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 原発再稼働に今年3月、新たな動きがあった。原子力規制委員会が、九州電力川内原発1、2号機(鹿児島県薩摩川内市)を全国の原発の中で、再稼働の前提となる安全審査を最優先する「優先枠」に選んだ。燃料費増大に苦しむ電力会社や、電気料金高騰に悩む経済界にとって光明が差したかに見えた。だが、期待通りに手続きは進まず、再稼働は早くても来年3月にずれ込む見通しとなった。

 「世界最高水準といわれる新規制基準をおおむねクリアし、特に重大な審査上の問題がないと判断された。大きなヤマを一つ超えた」

 立地自治体である薩摩川内市の岩切秀雄市長は、優先枠選定を受けて、こうコメントした。

 東京電力福島第1原発の事故を教訓に昨年7月、耐震・耐津波性能などを強化した原発の規制基準が施行され、九電は規制委に川内原発と玄海原発3、4号機(佐賀県玄海町)の安全審査を申請した。

 当初、審査は半年程度で終了し、昨年末か今年初めに再稼働している、との見方もあった。

 だが、審査は遅々として進まなかった。

 九電は規制委の言い分を、ほぼ「丸のみ」する形で優先枠を獲得し、他電力会社の協力も仰いで、審査に対応した。

 それでも膨大な書類作成に追われ、事実上の合格となる審査書案が完成したのは7月、正式な合格は9月10日だった。

 地元も動いた。再稼働には安全審査合格とともに「地元同意」が必要だからだ。

 薩摩川内市は10月28日に、鹿児島県も11月7日に議会が早期再稼働の意見書を可決し、岩切市長と伊藤祐一郎知事がそれぞれ「地元同意」を宣言した。

 この間、鹿児島には反原発派が集結した。公安調査庁が中核派系と認定する「すべての原発いますぐなくそう!全国会議」(NAZEN)の関係者もいた。こうした声高な反原発派に押し潰されることなく、伊藤知事らは国のエネルギー政策を鑑(かんが)みて、粛々と、ぬかりなく手続きを進めたといえる。

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 長期に渡る原発停止によって、日本の電力供給は危機を深めている。

 電力需要が増す夏冬が来るたびに、需給バランスは綱渡り状態になる。増大する火力発電用の燃料費は、電力会社の経営を圧迫している。

 九電をみると、平成25年度連結決算で最終損失が960億円に上った。3期連続の赤字だ。北海道電力は11月に電気料金再値上げに追い込まれ、関西電力も12月24日に再値上げを経済産業相に申請した。川内原発が動かなければ、他の原発も再稼働できず、再値上げドミノはさらに続く。

 電気料金上昇は、景気回復の大きな重しとなる。だからこそ、安倍晋三首相も衆院選最中の12月11日、薩摩川内市を訪れた。JR川内駅前の演説で「薩摩川内市は九州、そして日本に電力を供給していただいて本当に感謝しています。今後は安全を第一に、みなさんにご理解をいただいて、きちんとしたエネルギー政策を進めていく」と述べた。

 「再稼働」の文言こそ使わなかったが、「早期再稼働を政府として進める」との意思表示だった。

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 それでも、再稼働のゴールは見えない。

 当初、年内を想定していた原発の工事計画と保安規定の補正書提出が、年明けにずれ込むことが確実となった。規制委からの指摘に応じた結果、必要書類の量が膨大になったからだ。

 書類提出が完了するのは年明け以降になる。書類審査終了後に、規制委のメンバーが直接、川内原発を訪れる「使用前検査」がある。使用前検査は1カ月程度はかかるとみられており、再稼働は早くても来年3月の見通しだ。

 九電東京分室には現在も260人が詰め、規制委との対応を担っている。

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 今年1年、九州では企業間競争が激化した。エネルギーの完全自由化を見据え、西部ガスが火力発電事業への参入を表明した。年間売上高が拮抗するJR九州と西日本鉄道は、都市開発やホテル事業で火花を散らす。

 「新たな事業に向けた扉を開けることにした。総合エネルギー事業者としての発展の第一歩となる」

 1月27日、西部ガスの酒見俊夫社長は火力発電事業参入を正式発表した。

 北九州市若松区の液化天然ガス(LNG)受け入れ施設「ひびきLNG基地」(11月完成)の隣接地に、総出力160万キロワットの火力発電所を建設するという一大プロジェクトだ。

 発電所の建設・運営のノウハウを持つ大阪ガスや、他の複数企業もプロジェクトに参入する予定にしている。

 一方、迎え撃つ九電側も3月27日、石炭火力の松浦発電所(長崎県松浦市)に、出力100万キロワットの2号機増設を発表した。原発再稼働を進めながらも、安価な石炭を燃料にした高効率火力発電所を整備し、価格競争力を維持しようという狙いだ。

 背景には電力・ガスの自由化がある。家庭向けも含め、電力事業は平成28年度に完全自由化される。「地域独占」の歯止めがなくなり、電力とガスの垣根を越えた競争と業界再編が予想される。

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 競争激化はエネルギー業界だけではない。九州の2大運輸企業、西鉄とJR九州のバトルは、業界外からも注目を集めた。

 西鉄の平成25年度連結決算の売上高は3550億円、JR九州は3548億円だった。10年前までは西鉄が780億円の差をつけていたが、事業多角化を進めるJR九州が肉迫する。

 JR九州は今年2月、九州大六本松キャンパス跡地(福岡市中央区)の再開発事業のうち、複合施設ゾーンの土地約2ヘクタールを117億円で落札した。西鉄も入札していたが、金額でJRが大幅に上回った。鹿児島中央駅(鹿児島市)近くにある約2万7千平方メートルの土地も落札した。

 ホテル事業では今年8月、東京・新宿に「JR九州ホテル ブラッサム新宿」を開業した。

 西鉄も負けてはいない。

 韓国・ソウルに海外1号店として、ソラリアホテルを開業すると4月に発表した。来年度には高級ホテル「ソラリア」とビジネスホテル「西鉄イン」の中間グレードのホテルを整備する。

 さらに、天神を東西に横切るビジネス街「明治通り」の再開発をリードしている。首都圏や海外も舞台にした両社の競争から、来年も目が離せそうにない。

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