特捜本部はまず、使用された散弾銃の特定を通じて男に迫ろうと試みた。
現場には薬莢(やっきょう)が残されており、発射時に刻まれた、人間で言えば指紋に相当する「閉塞壁痕(へいそくへきこん)」の鑑定を進めた。その結果を基に、散弾銃の所持を許可された一人一人について、捜査員が直接出向いたり、全国の警察に照会をかけるなどしてしらみつぶしに確認していった。
男が使用したのと同じ種類の散弾銃は全国に約1700丁が存在。数年かけて1丁ずつ所有者に照会して所在を確認し、閉塞壁痕と照らし合わせたが、合致するものは見つからなかった。所在確認を行った散弾銃の数は、ほかの種類も含めると、1万丁をゆうに超えるという。
それでも男につながる情報は得られず、「散弾銃ルート」は絶たれた。
事件当時、捜査に加わった元捜査員は「正式な所有者や転売ルートなどを徹底的に当たったが、だめだった。犯人は闇ルートで流れた散弾銃を用いたのかもしれないが、出所はまったくの謎だった」と、悔しさをにじませる。