都内の「暴力団勢力図」変化 後絶たぬ犯罪、警戒緩めぬ警視庁

 今年は特定危険指定暴力団工藤会の東京進出が表面化するなど、都内の「暴力団勢力図」にも変化がみられた1年だった。暴力団対策法の改正や暴力団排除条例によって活動の幅が狭められている暴力団だが、組関係者らによる犯罪は後を絶たず、警視庁では摘発と警戒の手を緩めず取り締まりに当たっている。

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 ◆工藤会

 北九州市に本部を置く工藤会が関東に進出し、都内にも事務所を構えている事実が今年、表面化した。工藤会は台東区と千葉県松戸市に事務所を置き、構成員と周辺者が関東に50~60人いるとみられている。

 警察当局と激しく対立する工藤会は、暴力団排除に取り組む一般市民に対しても拳銃を発砲したり、手榴(しゅりゅう)弾を投げ付けるなど、凶悪性が高いことから、全国で唯一、特定危険指定暴力団に指定されている。

 警視庁は10月27日、労働者派遣業者が違法に得た利益の一部を受け取っていたとして、組織犯罪処罰法違反(犯罪収益収受)容疑で、工藤会系組員(36)を逮捕。同月30日には、実態把握と取り締まり強化のため「工藤会対策室」を設置している。

 ◆弘道会

 錦糸町にあるキャバクラの店長(29)らからカネを脅し取ろうとしたとして、警視庁は同月下旬、恐喝未遂容疑で、指定暴力団山口組弘道会系組員(34)=名古屋市昭和区=ら男3人を逮捕している。

 錦糸町と歌舞伎町、渋谷、池袋、上野、六本木の6地区では、警視庁が街頭防犯カメラシステムを運用し、犯罪抑止に特に力を入れている。警視庁は、山口組の有力傘下組織である弘道会が、みかじめ料を取るため錦糸町の繁華街に進出を図っているとみている。

 名古屋を拠点とする弘道会は、現在の山口組のトップとナンバー2を輩出。平成22年には当時の安藤隆春警察庁長官が「弘道会の弱体化なくして山口組の弱体化はなく、山口組の弱体化なくして暴力団の弱体化はない」などと発言した組織であり、警視庁関係者は「都内の繁華街での弘道会の動きは、常に注視している」と話している。

 ◆住吉会

 全国の暴力団のうちで、山口組に次ぐ人員を抱え、港区赤坂に本部を置く指定暴力団住吉会の会長が4月、交代した。警察関係者は「使用者責任と関係があるのでは」と推測する。

 暴力団トップの使用者責任とは、トップが関与していなくても、組員の行為による損害の賠償責任をトップが負うというもの。民法の「使用者は、被用者が事業の執行について第三者に加えた損害の賠償責任を負う」との規定に基づいている。20年施行の改正暴対法で、抗争の巻き添えだけでなく、組員が暴力団の威力を悪用した資金獲得活動で他人の生命や財産を侵害した場合も、トップの賠償責任追及がしやすくなった。

 24年には、建設会社との間で仕事上のトラブルを抱えた男性から仲裁交渉を委託された弁護士が、住吉会系の組長に交渉を妨害されたとして、当時の住吉会会長を相手取り1千万円の損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こし、会長側が300万円を支払うことで和解が成立している。

 会長の代理人は当時、「使用者責任を問う近年の流れもあり、円満に解決するため和解した」と説明しており、警察関係者は「前会長が使用者責任を忌避していたことも、会長交代と何らかの関係があるのではないか」と推察している。

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