未解決事件を追う

消えたキーマン 失われた手掛かり 女子高生ら射殺の八王子スーパー強殺19年、思わず漏れた「もう無理かも…」

 被告人質問で、男は「取り調べの初日から八王子事件のことや当時の交友関係、生活実態を聞かれた。説明すると、『お前はそこには行っていない』と否定され、『調べを受けないと、一生拘置所で過ごすことになる』とも言われた」と訴えた。カナダの裁判所は、男が旅券法違反罪以外で訴追されないことなどを条件に日本への移送を認めており、男の主張はもっともだった。

 捜査本部はこの訴えに真っ向から対立。取り調べを担当した捜査1課の警部補が証人として出廷し、「旅券法違反の取り調べが終わった後、八王子事件について参考人聴取というスタンスで話を聞いた。すべて適法だ」と主張した。

進展なく帰国… 「もう無理かもしれない」と関係者

 両者の主張は平行線をたどったまま、移送から約10カ月が過ぎた9月18日、東京地裁立川支部で判決公判が開かれた。倉沢千巌裁判長は男に懲役2年、執行猶予5年(求刑懲役2年)を言い渡した。

 倉沢裁判長は「旅券法違反の取り調べとしては長時間に及んだ点など一部で違法の可能性は否定できないが、公訴提起を違法にするものではない」としたものの、取り調べの一部について「八王子事件に関する聴取を主眼としていた疑いがぬぐえない」と指摘した。 男は満足そうに時折大きくうなずきながら判決に聞き入った。男は判決後、裁判所から東京入管の職員らに付き添われて直接空港に向かい、その日のうちにカナダに強制送還された。

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