複数の住民が午後9時15分から約5分の間に銃声のような音を4発聞いていたことから、犯行時間をこの5分間と断定。事務所内の金庫にはこじ開けようとした形跡があったが、売上金約400万円は残されており、犯人は矢吹さんらに金庫を開けるよう指示したが、抵抗されたため射殺したとみられる。
拳銃が一般人に向けられたことで、「銃犯罪のターニングポイント」と位置づけられる凶悪事件となったが、捜査は難航する。
犯人知る? 中国人の男を徹底取り調べ
現在の捜査では欠かせない自動車ナンバー自動読取装置(Nシステム)や防犯カメラは当時、それほど普及しておらず、目撃証言も少なかった。有力な手がかりが見つからないなか、捜査本部はある男の存在に色めき立つ。
事件から14年が過ぎた21年夏。日中混成強盗団のリーダー格だったとされる日本人の元死刑囚の男=当時(67)=から「カナダにいる中国人の男が実行犯を知っている」との情報を入手した。中国人の男は日本から偽造旅券で出国していたことが判明し、捜査本部は旅券法違反容疑で逮捕状を取得。25年11月、現地での2度の裁判を経て、男はようやく日本の地を踏んだ。
「犯人の手がかりを得ないままには絶対に帰さない」。捜査関係者によると、捜査本部ではそういった雰囲気が蔓延(まんえん)していたという。今年2月に開かれた初公判では、男の証言から捜査本部の執念ともいえる徹底した取り調べの一端が明らかになった。