秘録金正日(5)

列車にこだわった真相…「パイロット」の夢が一変、「人民」締め出し引きこもり

 死亡場所を「野戦列車」と書き換えさせるほど、金正日(キム・ジョンイル)が生涯、列車にこだわり続けたのはなぜか。

 2002年8月のロシア訪問を同行取材したロシア人女性記者のオリガ・マリツェワは、ロシア大陸を横断中の列車内で、金正日に「あなたはなぜ汽車で旅行するのですか」と直接、質問をぶつけたことがある。

 「外国メディアは、私を『高所恐怖症患者』のように描くが、実は違う」。彼女の著書によると、金正日はこう前置きした上で語った。「飛行機だったら何も見ることができないではないか。政治家たちに会って話すだけだろう。私はこの目でロシアの長所、短所を直接見たかったのだ」

 「少年時代、金正日の夢はパイロットだった」ともマリツェワは記している。

 北朝鮮の幹部たちも最高指導者におもねるように「将軍さまが汽車に乗られるのは人民に近づくためだ」と説明してきた。ところが専用列車の運行実態からは、いかに死を恐れ、「人民」と触れることを毛嫌いしていたかが浮かぶ。金正日が視察する地域では、到着2時間前から周辺を捜索、検問を開始し「人民」を閉め出す。列車が出発する瞬間から目的地までの沿線全ての明かりは消され、一般の列車は運行を停止する。

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