秘録金正日(2)

最後に頼ったのは「ほれた娘」影の後継者 死の間際に知った正恩らの失敗と裏切り

 脱北者によれば、工期を短縮するため、規格外の強度の弱いセメントを使ったり、土を混ぜたりした。セメントが乾くのを待たずにさらにセメントを注ぎ込むこともざらにあった。

 幹部、労働者を問わず、皆が都合のいい報告だけを上げ、最高指導者をだまし続けてきたのだ。そこには後継者たる正恩も含まれる。そのことに最後の最後で気付かされた。息子の責任を問い、後継者体制を見つめ直すにも残された時間はなかった。金正日が目指した「強盛大国」は、はかない夢に終わった。=敬称略

(龍谷大教授 李相哲)

【プロフィル】李相哲(り・そうてつ) 龍谷大学社会学部教授。1959年、中国黒竜江省生まれ。両親は朝鮮半島出身。中国で新聞記者をへて87年に来日。上智大学大学院博士課程修了(新聞学博士)。韓国政府関係者や脱北した北朝鮮元高官とパイプを持ち、北朝鮮の政情分析に定評がある。著書に『金正日と金正恩の正体』(文春新書)、『朴槿恵の挑戦』(中央公論新社)。テレビのコメンテーターとしても活躍。日本国籍。

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