満州国皇帝・愛新覚羅溥儀(あいしんかくらふぎ)が昭和10年に国賓として来日した際に宿泊するのに合わせ、国営だった奈良ホテル(奈良市)が新調した80年前の高級グラスや皿、カップなどが12~14日、同ホテルで初めて一般公開される。ホテル側で整理した結果、962点もの高級食器が残っていることも分かり、今回はこの中から選んだ47点を公開する。
溥儀は中国最後の王朝「清」のラストエンペラーで、1912年の辛亥革命で退位した後、1934年に満州国皇帝として即位した。
当時の新聞報道などによると、来日した溥儀一行は約100人。昭和10年4月19~21日、奈良ホテルに宿泊し、正倉院のほか東大寺、春日大社などを参拝した。奈良ホテルが溥儀を迎えるに当たって新調した皿やカップやグラスなどは大切に保管されており、現在も「貴賓用」として、皇室が宿泊される際に使用するという。皿やカップは「ノリタケカンパニーリミテド」(名古屋市)と「大倉陶園」(横浜市)が製造。一方、これまで製造元が不明だったグラスについても今夏、日本初のクリスタルガラスメーカー「カガミクリスタル」(茨城県龍ケ崎市)だと判明した。
ホテルでは製造元が判明したことをきっかけに、改めて目録の作成も開始。所蔵品の全体像も見えたことから、一般公開を決めた。ホテルの担当者は、「近代史の一幕を飾った食器が奈良にもあるというところを見てほしい」と話している。
公開は午前9時~午後7時、見学無料。問い合わせは、奈良ホテル宴会予約係(電)0742・26・3300。