衆院選2014 選択への視点

(3)農業振興と障害者雇用 神奈川

 □農業振興 「みやじ豚」代表取締役、宮治勇輔氏(36)

 ■経営資源生かす制度を

 過去10年で農作物の相場は下がり、家畜の餌代や作物の肥料代などは高騰した。デフレの影響もあり、海外に比べて割高な国内産品は買い控えられ、農業経営は苦しさを増している。

 相場が下がる理由の一つには、農家が販路を持たず、価格決定権がないことがある。生産者側が、それぞれの規模や立地、産物に合わせて適切な販路を開拓していく努力をしなければ、現状は変わらない。

 政府が推進する「規模拡大」は、拡大一辺倒では逆に競争力をそぐ可能性がある。規模拡大ができるのは日本の一部の農家だけであり、価格では外国産に太刀打ちできないからだ。

 日本の農家は今後、質で勝負していかなければならない。例えば「みやじ豚」は、日本の平均の4割ほどの経営規模だが、高品質というブランドと、適切な販路開拓により成功してきた。

 農家が変わる努力をしていく必要がある時期に、一律に補助金を出すような単純な保護政策は適切ではない。とはいえ、青年就農給付金や農林漁業成長産業化ファンドなど、農業を後押しする政策は既に出尽くしている印象がある。

 小規模な家族経営が多い日本の農家には、経営資源を活用するためのブレーンが足りておらず、今後は、農家のブレーンとなる右腕を支援するような制度が必要だ。農業や「食」を観光業や学校教育の柱の一つとして位置づけるなど、地域や農業形態の特性を個別に判断する視点に立った政策が求められている。

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【プロフィル】宮治勇輔

 みやじ・ゆうすけ 慶応大総合政策学部を卒業後、大手人材派遣会社に入社するが、農業を立て直したいと実家の養豚業を継ぐ。独自の直売制度で「みやじ豚」のブランド化に成功。NPO法人「農家のこせがれネットワーク」代表理事も務める。

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 □障害者雇用 日本理化学工業会長、大山泰弘氏(82)

 ■働く幸せかなう社会に

 今回の衆院選は雇用問題が一つの争点で、非正規雇用や女性の社会進出などに注目が集まっているが、私は障害者雇用にもっと光を当てるべきだと思う。

 障害者雇用対策は確実に進んでいるものの、まだ万全とはいえない。特に重度の知的障害者は、就職できずに障害者施設で一生を過ごす人も多い。

 しかし、それでは働く喜びを味わうことはできない。人間は働いて社会の役に立っていると実感することで、幸せを感じる生き物だ。国はもっと障害者が働きやすくなるように、手をさしのべねばならない。

 平成25年には、障害者雇用促進法によって民間企業に義務づけられた障害者雇用の割合が1・8%から2・0%に引き上げられたとはいえ、数字が届かない企業は納付金を支払えば済むという逃げ道がある。

 目標数値を定めることも大事だが、国が民間企業の経済的負担の一部を肩代わりしつつ、障害者の最低賃金を保障すべきだろう。

 日本理化学工業では、作業手順書に写真を添えたり、時間を計る際に砂時計を使用するなど作業工程にさまざまな工夫を凝らしている。それぞれの理解力や能力に合わせた仕事の段取りを考えて教えれば、障害者は大きな戦力になる。

 このように自立して収入を得られる障害者が増えれば、地域経済も活性化し、地方創生にもプラスとなるだろう。次の政権には、全ての人が働いて社会の役に立つ幸せをかなえられる社会を描いてほしい。

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【プロフィル】大山泰弘

 おおやま・やすひろ 創業者である父親の跡を継ぎ、昭和31年に日本理化学工業に入社。都内の養護学校から生徒の就職を依頼されたことを機に障害者雇用に積極的に取り組み、現在は全従業員の7割以上が知的障害者。平成20年から会長職。

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