正論

ロシアを脅かす原油安の「悪夢」 北海道大学名誉教授・木村汎

 ロシアは、己の外交目的達成の手段としてエネルギー資源を最大限に活用しようとしている。昨年末から今日まで続行中の「ウクライナ危機」ひとつを例にとっても、このことは明らかといえよう。ロシアは、例えば天然ガスの供給を停止したり再開したり、またその販売価格を上下させたりすることによって、政治・外交上の譲歩を入手しようとする。ウクライナに対してばかりでなく、欧州連合(EU)諸国に対しても、そのような戦術を用いている。

 ≪一元的パワーに潜む脆弱さ≫

 しかし、エネルギー資源分野でのロシアの強みは次第に失われつつある。その主要事由は次のとおり。まず、肝心要の西シベリアでの油田が枯渇しはじめた。他方、代替が期待される東シベリア、ロシア極東、北極海は、気候や技術の点で採掘が困難なうえに、米欧諸国の金融制裁なども作用して開発が思うように進まない。

 加えて、シェールガスなど非在来型資源、その他の代替エネルギーの開発などによって、例えばEUはロシア産資源を以前ほどには必要としなくなりつつある。

 かつてのソ連は軍事力偏重の一元的パワーであり、米国との冷戦に事実上、敗れたのもそのことと無関係でなかった。ウクライナ危機を契機として再発した米露間の対立を、仮にミニ冷戦と名づける場合、この闘いでロシアはエネルギー資源を最大の外交手段にしようとしている。

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