番頭の時代(12)

カリスマ「永守」をハッとさせた番頭の一言「私が辞めたら困るのはあなたですよ」

 永守は会社を成長させるため、人前でも容赦なく社員を怒鳴りつけてきた。叱責のファクスを大量に送りつけることもあった。耐えきれず、会社を去っていく人間も少なくなかった。今の日本電産があるのは、小部のように永守の叱責に耐えながらも会社にとどまり、戦い続けた社員がいたからだ。

 トップの視界に入っていない経営や事業のリスクをいち早く察知し、的確な道を示していく。永守は番頭としての小部の役割を独特の言葉で表現する。

 「後ろを支えてくれるわけや。(自分の)後ろは目あらへんやろ。そういう役目や」

 その小部も65歳になった。平日は本社がある京都で、週末は自宅のある東京で過ごす生活を10年以上続けているが、最近は休日に孫の顔を見るのを楽しみにしているという。

 社内では「(永守が)退任するまでは、一番の子分として最後まで付いていく」と言われている。

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 「人材もなかなか優秀な者がいる。皆さんに不安を与えないような形で次の世代にバトンを渡していく」

 6月18日、京都市内で開かれた日本電産の株主総会。引退時期を気にする株主からの質問に永守は淡々と答えた。日本電産は創業時の経営3原則に「非同族企業」を掲げた。同族企業は親族を社長や幹部に登用するため、実力のある優秀な人材の意欲をそぐ恐れがあるからだ。

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