名言か迷言か

「バッジ」のためなら「変節」なんか気にしない 「みんな」前議員たちのなりふり構わぬ移籍

 自民党でも民主党でもない「第三極」として平成21年に旗揚げしたみんなの党が28日、消滅した。野党共闘か、与党連携かという路線対立をめぐる内紛劇が結党から5年で幕を閉じる引き金になった。「口汚く家族でケンカして家を壊してしまい、みんないなくなった政党もある」(公明党の山口那津男代表)と皮肉られても、永田町でバッジをつけ続けるためならどこへでも行く人たちがいた。

 みんなの党の結党メンバーの一人、山内康一前衆院議員は、渡辺喜美前代表の8億円借入問題に端を発した内紛の最中だった9月中旬、苦しい胸中を周囲に漏らしていた。

 「喜美さんには恩義があるが、自民党を離党したのに、自民党にすり寄るのはどうか。僕は政権の暴走を食い止めたい方だから、路線的には浅尾(慶一郎代表)さんになるのかな…。いずれにしても、これまでの発言との整合性も考えないといけない」

 それから2カ月。19日の党両院議員総会で解党を決めた翌20日、山内氏から迷いは消えていた。この日、党に離党届を提出し、その足で民主党に入党届を出した。目前の衆院選では埼玉13区から民主党公認で出馬することになった。

 記者会見では、転職先として民主党を選んだ理由について「安倍晋三政権に対する対抗軸をつくらないといけない」と力説した。「穏健な中道勢力が必要で、民主党という選択に全く違和感はない。一番近いのは民主党だ。みんなの党と共通する部分も多い」と親和性を強調した。

 だが、かつて自身のブログで「経済政策はバラマキ、外交・安保政策はバラバラという悪しき民主党体質です」(22年3月28日)と、民主党批判を展開していた主張との整合性に関する説明はなかった。

 民主党の労組依存体質に関しても、山内氏はブログで「民主党は公務員労組や旧社会党の勢力も強く、真ん中よりも左より。大きな政府へと向かうのは最初からわかりきったことです」(22年3月30日)と断じていた。みんなの党の結党宣言も「特定の業界や労働組合に依存することなく、国民に根ざした政党を結党する」と掲げ、行政改革を阻んでいるとして官公労を厳しく批判してきた。

 山内氏もその趣旨に賛同したオリジナルメンバーのはずだ。それなのに、「労組依存が悪だとは思っていない。一定の役割を果たさないといけない」(20日の民主党入党会見)と変節した。衆院選を目前にすれば、無所属よりも政党公認で立候補の方が、比例代表との重複ができるほか資金面などで有利になるのは確かだ。しかし、「無節操な移籍」との批判は免れない。

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