外信コラム

ソウルからヨボセヨ 権力と食文化

 韓国人の古老から聞いた話で、ソウルで「日式(イルシク)」といわれる日本料理など魚をよく食べるようになったのは、南部の慶尚北道(キョンサンプクド)出身者が政権を握った朴正煕(パク・チョンヒ)大統領時代の1960年代以降だという。それまでは反日色が強かった李承晩(イ・スンマン)大統領をはじめ北朝鮮出身者が羽振りをきかせていたので、ソウルに「日式」はほとんどなかったという。

 権力と食文化の関係として面白いが、90年代以降も金泳三(キム・ヨンサム)政権では大統領の実家が慶尚南(ナム)道・巨済島(コジェド)のイワシ漁の網元で「だしジャコ」が人気を呼んだ。金大中(デジュン)大統領は故郷の全羅(チョルラ)南道・木浦(モクポ)名物で発酵させた「エイの刺し身」が好まれ、盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領時代は出身地の釜山名物「アナゴ(日本語のまま!)の刺し身」が話題になった。

 李明博(ミョンバク)前大統領は故郷が東海岸の浦項(ポハン)で、名物サンマの浜干し「クァメギ」が全国的に知られるようになった。干したサンマをそのままワカメや野菜でくるみトウガラシ味噌(みそ)で食べるので酒のさかなにいい。

 ただいまその季節で、それをいただきながら「ところで朴槿恵(クネ)大統領時代は何になるのかな?」となったのだがピンとこない。彼女の好物が魚か肉か野菜モノかはたまた麺類なのかよく分からないのだ。このあたりの情報公開があればもっと親近感が出るのに惜しい。(黒田勝弘)

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