ローソンの社長を12年間務め、11年連続で増益を達成した新浪の手腕については論をまたない。だが、サントリー会長の佐治信忠が新浪を自身の後任に選んだ理由は経営者としての才覚だけではない。
佐治は新浪を「社外で最も『やってみなはれ』の精神、わが社のDNAを持った人」だと評す。創業家からの後任という慣例を破ってでも手に入れたかったのは、佐治自身と価値観を共有し、社長とはいえサントリーという大店を任せられる新しい時代の「番頭」=「BANTOU」だ。
「あしき官僚化が進み、やんちゃな社員が少なくなった」
佐治は、サントリーが陥った大企業病への危機感をあらわにする。かつてはウーロン茶を国民的な飲料へとヒットさせ、焼酎事業にも参入するなど、型破りな独創性で多角化を進めた。だが、最近は商品開発で他社の後塵(こうじん)を拝する事案が目立つ。
現状を打破し、「やんちゃ」な企業風土を取り戻すには、今も14年前のやんちゃな心意気を失わない、物言う番頭の力が必要だった。佐治は「新しい風を吹き込んでほしい」と語る。