主張

GDPマイナス 不安解消へ脱デフレ急げ

 ここまで悪い数字を誰が予想しただろうか。消費税率8%への引き上げが響き、7~9月期の実質国内総生産(GDP)が年率換算で1・6%減まで落ち込んだ。

 4~6月期に続くマイナス成長である。景気回復を期待した政権の思惑はおろか民間予測も大きく下回る数字だ。

 これを踏まえ安倍晋三首相は消費税率10%への再増税を延期する。脱デフレの歩みに懸念がある以上その判断はやむを得まい。

 首相に求めたいのは、自らの経済運営で景気回復が思うように進まない現実を真摯(しんし)に受け止め原因を分析することだ。その上で消費を冷やす不安心理の解消へ経済再生を急ぐことが責務である。

 増税後の物価上昇に賃上げが追いつかず、個人消費が0・4%増にとどまった。天候不順など逆風もあろうが、それを乗り越える消費の回復力はみられなかった。

 脱デフレの歩みは途上だ。地方の中小企業は回復実感も乏しいままである。そこに追い打ちをかけるように回復の遅れがはっきりすると、経済再生への期待がさらに萎(しぼ)みかねない。それが心配だ。

 「三本の矢」から成るアベノミクスは正念場だ。日銀の金融緩和は脱デフレに欠かせないが、急激な円安を招き、輸入物価が上昇することへの懸念も高まった。

 8%増税の対策として実施した公共事業は、人手不足や資材高騰が響き、景気全体を牽引(けんいん)できるほどの力強さがみえない。民間主導の経済成長を後押しする肝心の成長戦略の具体化もこれからだ。

 こうした懸念に明確に対処できなければ、10%増税を先送りしても不安心理は解消されず、経済政策への信頼感も高まるまい。

 足元では企業収益や雇用環境が改善し、所得から支出への好循環を示す指標もある。政府が規制緩和などで民間を後押しし、企業は稼いだ収益を賃上げや投資につなげる。そうした取り組みを強めることが何よりも肝要だ。

 指摘したいのは、日本が脱デフレと財政再建を両立できるかどうかは、景気の停滞感が漂う海外からも注目されていることだ。

 首相は20カ国・地域(G20)首脳会合でアベノミクスの成果をアピールした。いたずらに先行きを悲観する必要はないが、従来の成果を強調するだけでは理解は得られまい。首相に問われるのは経済再生への覚悟と実行力である。

会員限定記事会員サービス詳細