主張

TPP首脳会合 交渉の漂流は絶対避けよ

 日米など12カ国は環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉の年内の大筋合意を断念した。首脳会合の声明には肝心の交渉期限すら明記できなかった。

 TPPは世界に先駆けて新たな貿易・投資秩序を確立しようとする野心的な枠組みである。その交渉がもたつき、妥結時期のメドも示せない現状は憂慮すべきだ。

 アジアで経済覇権の動きを強める中国に対抗するためにも、日米が主導すべきTPP交渉をこれ以上遅らせるわけにはいかない。

 日米両国はもとより、全ての参加国首脳が事態打開に向けて強い覚悟を示し、交渉を加速しなければなるまい。

 声明は「(交渉の)終局が明確になりつつある」とした。合意を急ぐ米国に押し切られることを警戒する国もあり、期限設定に至らなかったようだが、ずるずると協議を長引かせてはならない。本当に終局に来たのなら、結束して妥結機運を高めてもらいたい。

 カギを握るのは米国の出方だ。米国は関税で日本と、国有企業改革や知的財産権などで新興国と対立する。これまで強硬姿勢を崩さなかったのは、中間選挙を控え世論を意識したからだ。

 だが、その選挙は終わった。上下両院を制した野党共和党は自由貿易推進に前向きだ。オバマ大統領はこの機を逃さず、議会から速やかに一括交渉権を得られるよう働きかけを強めてほしい。

 注意したいのは、中国が経済覇権の動きを強めてきたことだ。

 自国抜きのTPPを警戒する中国は、TPP首脳会合と同じタイミングで、韓国との自由貿易協定(FTA)交渉を実質的に妥結させた。中国市場で韓国勢と競合する日本企業には逆風である。

 中国が重視するのは米国抜きの経済連携だ。日韓両国や東南アジア諸国連合(ASEAN)などとの交渉に軸足を置いている。

 最近は「アジアインフラ投資銀行」の設立を仕掛けるなど金融面でも存在感を高めており、中国の攻勢は今後も続くだろう。

 もともとTPPには、国有企業を軸とした中国の国家資本主義を牽制(けんせい)する狙いがある。

 日米が主導できずに交渉が遅れると、その分、世界の成長センターであるアジアで、中国の存在感がさらに高まることを忘れてはならない。

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