日中首脳会談へ

友好ムード演出も両国に3つの火種…「歴史」「領土」「安保」

 10、11日のアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に合わせて行われる日中首脳会談。日中両政府は7日、その地ならしとして合意文書を発表した。だが、日中間の懸案である「歴史」「領土」「危機管理」について、双方の立場が完全に一致したわけではない。約2年半ぶりに行われる首脳会談では表向き友好ムードが演出されるとみられるが、3つの火種はどうなるのか。

 ■歴史

 安倍晋三首相と習近平国家主席の会談実現に向けて水面下で行われた交渉では、中国側が、(1)安倍首相が靖国神社に参拝しないと確約(2)尖閣諸島(沖縄県石垣市)の領有権問題が存在-の2点を認めるよう強く迫った。

 靖国問題について、日本側は合意文書に「靖国」と明記することを拒否。首相が外国に強制されて靖国参拝をしないと明言する可能性がないことは中国側も認識しているとみられ、最終的に「政治的困難を克服」との表現に落ち着いた。

 「政治的困難」に靖国問題が含まれていることは、日本外務省幹部も認めているが、首相は7日夜のBSフジ番組で「これは個別の問題を含むものではまったくない」と説明。中国側の意向に関係なく、靖国神社に参拝するかしないかを判断する考えを表明した。

 首相が今後参拝すれば、中国政府が今回の合意文書に「違反」していると批判する可能性もあるが、合意文書に「靖国」の文言が入らなかった事実は重い。外務省幹部は同日夜、文書で「若干の認識の一致をみた」と表現されていることについて「そこがいいところじゃないですか。この万感の思いをかみしめてほしい」と語った。

 ■領土

 一方、尖閣諸島の領有権問題に関しては、文書の中に「尖閣諸島」と明記された。ただ、日本側は「変な妥協は一切していない」(交渉担当者)としている。文書で「異なる見解を有していると認識」としている点についても、首相は7日夜、「日本の領海に(中国の)公船が入っていることについて中国側に抗議している。そうしたことが『緊張状態』となっているという見解となる」と述べ、あくまで安全保障問題について立場を異にしていることが文書に反映されているとしている。

 とはいえ、首相自身が「中国側はおそらく中国側の考え方があるわけだが…」と認めるように、尖閣諸島領有権問題の棚上げを主張し続けてきた中国側は、日本側が歩み寄ったと評価している。国際的な宣伝戦で「日本が棚上げを認めた」と触れて回る可能性が高い。

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