「見せ玉(ぎょく)」と呼ばれる手口で不正に株価をつり上げ利益を得たとして、東京地検特捜部は10月8日、金融商品取引法違反(相場操縦)罪で、早稲田大の非公認投資サークルOBの男性2人を在宅起訴した。実は平成21年にも同サークルOB3人が同様の手口で約40億円の利益を上げ、同法違反罪で有罪判決を受けている。今回の2人は同じ轍(てつ)を踏むのを避けようと巧妙な手法を駆使したが、結局は露呈した。同じサークルのメンバーによって繰り返された現代の錬金術の実態に迫った。(市岡豊大、田中俊之)
総額3億円稼ぐ?
「彼の名はよく知っていた。(21年の)事件当時からマークしていた。その後も見せ玉を繰り返し行っているとの情報もあり、東京証券取引所も注視していたようだ」
ある証券会社の担当者は、今回在宅起訴された東京都豊島区の無職、有江正宏被告(35)についてこう話す。早大投資サークル「マネーゲーム愛好会」OBによる相場操縦事件が発覚した21年当時、メンバー約20人のリストが証券業界に出回り、有江被告の名前もあったという。
証券業界は、有江被告と、ともに在宅起訴された東京都荒川区の会社役員、布浦隆司被告(32)の動向を、5年越しで注視していたという。起訴状によると、2人は25年2~8月、大量の売買注文を出して成立前に取り消す見せ玉の手口で、東証1部上場の4銘柄の株価を不正につり上げたとされる。