鹿児島・薩摩川内市、押し寄せる反原発派はねのける

 九州電力川内原発の再稼働に28日同意した鹿児島県薩摩川内市議会と岩切秀雄市長。東シナ海に面した人口10万人の地方都市には、反原発派が押し寄せ、市役所には全国から抗議が相次いだ。それでも、薩摩川内市は中長期をにらんだ国のエネルギー政策に理解を示し、反原発派の重圧をはねのけ、速やかな再稼働同意にこぎ着けた。(奥原慎平)

 「市民の代表である市議が慎重かつ丁寧な判断を下した。電力を安定的に大量供給できる原発は産業の振興に不可欠だ。代々の市長や市議は原発に対する知見が深く、九州電力に安全を要望してきた。それはこれからも変わらない」

 記者会見を開いた薩摩川内市の岩切秀雄市長はこう語り、再稼働容認の姿勢を示した。

 一方、再稼働同意の断を下した市議の表情には、重圧から解放された安堵(あんど)がにじんだ。

 市議の上野一誠氏は「再稼働第1号は大きなプレッシャーと責任を感じた。(原発が停止したままでは)地元経済の振興はもとより、全国的に電気料金が再値上げする可能性もあり、一般家庭の生活に影響しかねない」と語った。

 大きなプレッシャーを感じた一因が、反原発派の言動だった。

 川内原発は9月、原子力規制委員会の安全審査をクリアし、再稼働候補1番手に浮上した。この結果、鹿児島に反原発派の目が注がれるようになった。

 9月28日に鹿児島市内で行われた反原発集会には、全国から7500人(主催者発表)が集まった。この中には公安調査庁が中核派系と認定する「すべての原発いますぐなくそう!全国会議」(NAZEN)の関係者も参加していた。

 反原発派は、再稼働に同意した28日の薩摩川内市議会の臨時議会でも、議事進行を妨害した。

 40席の傍聴席に対し、約110人の反原発派が駆けつけた。傍聴席からのヤジは、瀬尾和敬議長が制止してもやまない。地元の反原発団体「反原発・かごしまネット」代表の向原祥隆氏ら3人が退席を命じられたが、命令に従わなかった傍聴人もいた。

 市側は混乱を避けようと、規則に基づき市役所入庁を制限し、職員250人態勢で警備にあたった。庁舎の入り口では、付近に座り込んだ反原発派が職員に対し、「市職員がやることじゃねえぞ」「お前ら良心はあるのか!」などと罵倒した。

 市には、今月20日以降、電話やファクスでの再稼働に反対する抗議が330件届いた。このうち市内からの意見は20件にも満たないという。

 市内のデモ活動も盛んになった。

 JR川内駅近くのホテルに勤務するパートの女性(61)は「反対派は正直怖い。街宣車みたいな車に乗って大声でわめくので威圧感があります。帰宅する際にちょうどデモ活動に出くわすので、回り道して帰っているんです」と語った。

 東京電力福島第1原発事故をみて、市民に原発への不安がないわけではない。だが、過激化する反原発派の行動は、原発の安全性などについて、冷静に議論する機会も奪っている。

 市長の岩切氏は記者会見で「もう少し冷静に話ができないものか」と嘆いた。岩切氏は市議会本会議での採決を控えた27日、九電本社(福岡市中央区)を訪れ、瓜生道明社長に川内原発の安全確保について、万全を期すよう改めて要請したという。

 市長、市議会の冷静な判断により、再稼働に向け、大きな一歩を踏み出した。瓜生社長は28日、「薩摩川内市長、市議会のご判断に心より感謝申し上げます。地域の皆さまが安心していただけるよう、今後ともさらなる安全性・信頼性向上への取り組みを進めていく」とするコメントを発表した。

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