外務省は25日、歴史認識をめぐる各国議会でのロビー活動を強化する方針を固めた。米、カナダ、オランダの3カ国の議会下院で過去に慰安婦問題を理由とした対日非難決議が採択されたことを踏まえた措置。外務省は平成27年度予算案の概算要求で対外発信予算を500億円増やしており、増額分の一部をコンサルタントやロビイストの活動費に充て、議会対策に本腰を入れる。
第1次安倍晋三政権下の19年7月に米下院本会議で慰安婦問題をめぐる対日非難決議が採択された。当時は広報、ロビー活動の予算が限られており、在ワシントン大使館や米国内の総領事館による発信や議員への働きかけが不十分で、議会対策が後手に回ったという反省がある。
米議会では業界や各国の利益を代表するさまざまなロビイスト、コンサルタントが政治家に強い影響力を持っている。
このため、日本政府は手薄だったこの分野への予算を増やし、優秀な人材を確保。議会対策を重視する方向に転換する。
安倍政権は、慰安婦の強制連行があったかのような認識が国際社会で広まっていることを問題視し、朝日新聞が吉田清治氏の証言を取り消したことを受け、慰安婦をめぐる誤解を解く作業を急いでいる。
最近は吉田氏の証言を引用した平成8(1996)年の国連人権委員会(当時)の「クマラスワミ報告書」の一部撤回を求めるなど具体的な取り組みを進めている。
議会対策もその一環で、岸田文雄外相は3日の衆院予算委員会で「さまざまなロビイストを動員してわが国の立場を説明し、努力を続けなければならない」と強調した。