九州大大学院の栁佑典氏(小児外科学)らの研究グループが、乳歯から抽出した幹細胞を使い、肝臓など臓器の再生医療に取り組んでいる。マウスでの実験に成功し、今後、人間と内臓組織が似ているミニブタでの実験を開始する。体のさまざまな種類の細胞に分化する幹細胞を利用した再生医療は、世界的に開発競争が激化している。九大は乳歯というありふれた素材と、立体造形物を作成する「3Dプリンター」を駆使した「医工連携」によって、この分野の最先端を目指す。
福岡市東区にある九州大大学院医学研究院棟の研究室。高さ2センチ、直径1センチほどのドーナツ状の「ミニ肝臓」ができあがっていた。
異常がある患者の肝臓に、このミニ肝臓を複数埋め込むと、肝臓の他の部分と融合し、機能回復につながるという。
このミニ肝臓の元となるのが乳歯の神経部分(歯髄)だ。歯髄部分には、さまざまな種類の細胞に変化できる幹細胞が含まれている。2003年に米・国立衛生研究所(NIH)の三浦晶子氏らのグループが取り出しに成功した。