関西の議論

ノーベル賞まであと一歩に迫る男、山中教授と同じラスカー賞獲得 ライバルとデッドヒート

 森さんが論文を科学誌に投稿すると、「詳しい仕組みを調べてほしい」との返答。そうするうち、またもやウォルター教授が論文を発表した。今度はHAC1の発見だけでなく仕組みにまで言及していた。しかし、その内容に森さんは疑問を持った。

 「ウォルター教授の論文はHAC1の仕組みの部分が間違っているのではないか」。相手は分子生物学の権威で、論文を掲載したのは一流のセル誌。森さんが問題を指摘した当初は、とても受け入れられる雰囲気ではなかったという。

 しかし、ほどなくウォルター教授は実験結果が誤っていたことに気づき、自ら訂正の論文を発表。森さんも自説を論文にまとめ、現在ではこちらが正しいものとして定着している。

 その後、森さんは京都大大学院生命科学研究科の助教授を経て15年、理学研究科の教授に就任。かつてあこがれだった京都大理学部の教員になった。

 「目の上のたんこぶだったが、(ウォルター教授と私の)2人がいたから研究が進んだ」。実際、UPRの研究は森さんとウォルター教授がIRE1の論文を発表したことで始まったとされ、これまでに2人はラスカー賞やガードナー国際賞など数々の賞を共同で受賞している。

 現在、UPRは生命活動にとって必須の仕組みであり、ヒトでも糖尿病やパーキンソン病など多くの病気に関係していると考えられている。「まだ病気を治すところまできていないが、いずれ役に立つようにしたい」と展望を描く森さん。そのために不可欠な存在でもあるウォルター教授について、こう評した。

 「ピーターは素晴らしい科学者。かつて死闘を演じたが、今では会えばハグする仲ですよ」 

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