島が危ない 北の海の火種(3)

見殺しに等しい劣悪医療環境、物価は本土の「倍」…日本人が安心して暮らせぬ「理不尽」

 平成24年春のことだった。午前6時ごろ、北海道・礼文島の礼文町香深(かふか)で、70代の女性が自宅で倒れているのを畑仕事から帰宅した父親が見つけた。

 女性は近くの道立診療所に運ばれたが、脳出血の疑いが濃いため、医師は旭川市の総合病院にドクターヘリの出動を要請した。午前7時半ごろのことだ。

 ところが、総合病院からは「態勢が整っていないから9時まで待ってくれ」。旭川から礼文島まではヘリコプターで片道1時間。手続きを終え、ヘリが香深港ターミナルのヘリポートに到着したのは11時ごろだった。総合病院への到着は正午を回っていた。

 女性は手当てを受けたが、亡くなった。「倒れてから病院に着くまで6時間かかった。時間がたち過ぎた」。小野徹町長(64)は振り返る。

 小野町長によると、急病による北海道本土への緊急搬送は、多いときで年間約10件。最近は観光客が事故や発病で搬送されるケースが増えている。

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 礼文町には道立診療所が香深に1軒、町立診療所が船泊に1軒ある。ただ、町立診療所は内科だけ。道立診療所は外科と内科だが、大きな手術はほとんどしないため、緊急時は稚内市か旭川の病院に搬送される。産婦人科と眼科は月に1回、医師が稚内から町立診療所に来るだけだ。