産経抄

国民情緒法 10月10日

 「国民情緒法」という言葉を、昨年10月の「ニューズウィーク日本版」の記事で知った。法律より国民感情を優先するという、見えざる法が、韓国に存在するというのだ。

 ▼韓国の人々の豊かな感情表現は、民族としての美質のひとつかもしれない。ただ残念ながら、それが「反日」の形をとると、司法でさえ暴走してしまう。確かに思い当たる、とんでもない司法判断が近年、相次いでいる。

 ▼戦時中に日本で徴用された韓国人に対し、ソウル高裁が新日鉄住金に賠償を命じたのは、昨年7月だった。これは、日韓両国で結んだ、請求権問題は解決済みとする協定を踏みにじるものだ。靖国神社の門に放火した中国籍の男が政治犯に認定され、日本側への身柄引き渡しを拒否する判決もあった。長崎県対馬市の寺から盗まれた仏像の返還も差し止められたままだ。ソウルの日本大使館前に韓国の反日団体が建てた「慰安婦」像が、違法状態のまま放置されているのは、その最たる例だろう。

 ▼ソウル中央地検はとうとう、小紙の加藤達也前ソウル支局長の在宅起訴に踏み切ってしまった。加藤記者がインターネット上で、日本の読者に日本語で掲載した記事が、果たして朴槿恵大統領の名誉を毀損(きそん)した罪に当たるのか。日本国内の法曹関係者は一様に首をかしげる。

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