訓練を終えた航空機がうなりを上げて滑走路に滑りこんでくる。「何事もなく飛び立って、帰還するまでは緊張が解けることはない」。無事に停止した様子を確認すると、厳しい視線がふと和らいだ。
航空管制官としてパイロットや乗務員を支える。下総航空基地ではP3C哨戒機の航空要員も育成する。「過酷な訓練をして戻ってくるパイロットたちに、余分なストレスを与えない誘導を心がけたい」と話す。
背景には、平成24年9月から1年間、アフリカ・ジブチで海賊対処行動航空隊とともに活動し、その活躍を間近で見てきた経験がある。
近年、P3Cの活動の幅は急速に広がった。ソマリア沖の海賊から日本の船舶を守るため、政府は21年から海自を派遣している。
ジブチでは海曹として唯一、長期任務に就いた。専門知識を生かし、航空隊が使用する国際空港の管制官と隊員との調整にあたり、物資調達など後方支援にも従事した。数カ月間のローテーションで活動する隊員を見送るたび、「日本に残してきた妻や幼い息子たちに会いたいと思ったことも一度や二度ではなかった」と笑いながら振り返る。
ソマリア沖での自衛隊の活動が、国内で報道されることは少ない。「大きな事件が起きていない証し。P3Cからの呼びかけをはじめ、隊員たちの警戒監視活動は海域の安全に貢献している」。その誇りを胸に、パイロットや乗務員のサポートに全力を尽くす。