きょうの人

「おもてなし」アジア人初の快挙 国際ガストロノミー学会国際グランプリ受賞 中村登代子さん

 老舗料亭「京都一子相伝なかむら」(京都市中京区)の女将として、50年以上にわたり真心を込めたおもてなしを続けてきた。今年、各国の食文化を世界に発信する団体「国際ガストロノミー学会」(本部・フランス)の国際グランプリを受賞。18日に東京都渋谷区の国連大学で開かれた表彰式で「こんな立派な賞をもらっていいのかしら」と遠慮がちに喜びを語った。

 同学会は世界21カ国に拠点を持つ食の世界的権威を有する組織。毎年、料理人らに賞を授与しており、国際グランプリの受賞はアジア人初の快挙だ。

 「なかむら」は創業187年の伝統を持つ。5代目の料理人を務める夫の文治さん(77)のもとに22歳で嫁いだ。「朝から晩までバタバタの日々だった」が、仕事がいやになることはなかった。「『よかったわあ』と喜んで帰ってもらうだけでうれしくてうれしくて」。客の喜ぶ顔が何よりの原動力となった。

 季節や客人によって客室の花や掛け軸を変え、きめ細かいもてなしを徹底してきた。「おもてなし」という言葉が話題を呼ぶ昨今だが、「私らにとっては当たり前の言葉です」と淡々と話す。若女将の中村尚子さん(50)は「人を喜ばせることが体の芯から染み込んでいるんです」とその姿勢を絶賛する。

 賞を受け取っていいのか困惑していた折、文治さんが「一生懸命やってきたんやから」と言ってくれたのがうれしかった。表彰後「引退も考えておりましたけれども、こんな賞もらったら、もうちょっと頑張らなあかんかな」と笑った。(田中俊之)

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