昨年10月10日、休暇を利用して、楢原(ならはら)雅規2等陸曹(28)は岡田知也陸士長(22)を誘い、鳥取県岩美町の港で釣りを楽しんでいた。帰り支度をしていた午後6時30分ごろ、「ドーン」という大きな音を聞いた。「車が落ちたのでは」と直感し、駆けつけたところ、自動車が海に転落しているのを発見した。
楢原陸曹は、岡田陸士長に119番と110番通報を指示した後、持参していたライフジャケットを装着して海に飛び込んだ。運転していた高齢男性は自力で陸に上がったが、助手席に高齢女性がいることを知り、暗い海の中を懸命に捜し、浮いていた女性を発見。背負って岸まで泳ぎ、岡田陸士長と協力して岸へ引き上げて蘇生を行った。
楢原陸曹は「『助けなければ』との一心で海に飛び込んだ。真っ暗な海の中で捜すのは大変だったが、海水の冷たさは感じなかった」と振り返る。岡田陸士長は「楢原陸曹の冷静な行動と的確な指示で、消防や警察への連絡も落ち着いてできた」と話す。
野戦特科に所属する2人は救急救命処置も経験しており、「ライフジャケットを車に常備していたことが役にたった。2人だったから心強かったし、協力できた。助けられて本当に良かった」と笑顔を見せた。
2人は今年8月、大規模土砂災害で多数の犠牲者を出した広島市安佐南区に災害派遣出動した。「これからも国民の安全が守られるよう、訓練を積み重ねていきたい」と決意を語った。