鑑賞眼

Bunkamura 「炎立つ」 現代・東北に重なる復興の物語

古代神役の平幹二朗(奥)と、キヨヒラ役で主演する片岡愛之助(福山楡青撮影)
古代神役の平幹二朗(奥)と、キヨヒラ役で主演する片岡愛之助(福山楡青撮影)

主役は舞台上に立ち続ける杭(くい)、かもしれない。1千年の昔、戦禍に荒れた東北に杭を打ち込み、復興させた藤原清衡(きよひら)。全幕を通じ、地鳴りのように響き続ける槌音(つちおと)は、東北に散った数多(あまた)の命の鼓動であり、試練にくじけぬ生命力の象徴である。

NHK大河ドラマにもなった高橋克彦氏の同名小説の初舞台化。奥州藤原氏の興亡を描く原作を、高橋氏が清衡中心の原案を提供、栗山民也が演出した。

父没後、敵将に再嫁した母(三田和代)とともに、人質暮らしを強いられたキヨヒラ(片岡愛之助)。しかし、敵将死後、陸奥守(益岡徹)の謀略で、異父弟イエヒラ(三宅健)と争う羽目に。舞台は、血で血を洗う戦の悲劇と愚かしさに苦悩するキヨヒラと、魂を古代神(平幹二朗)に預け戦に邁進(まいしん)するイエヒラを対照的に描く。

余計なものを一切取り除いた演出で、石など素材感を生かした美術(二村周作)もすがすがしい。それが舞台出身の芝居巧者を集めた俳優の演技を引き立て、せりふに集中させる。巫女(みこ)(新妻聖子)率いるコロス(合唱隊)を進行役に使ったギリシャ悲劇的スケール感に引き込まれると、彼女らが数千の軍勢に見えてくる。

愛之助は家族を失う苦しみを隠さぬ、等身大の武将像。勝利しながら、悲しみの中で杭を打ち続ける姿に、今の東北の姿が重なった。洗練された脚本(木内宏昌)が、原作を普遍的な復興の舞台に蘇(よみがえ)らせた。現人神のような平と、三田の存在感が圧巻。31日まで、東京・渋谷のシアターコクーン。地方公演あり。(飯塚友子)

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