岡田敏彦の軍事ワールド

「撃たれた小隊長を見捨て、兵士は逃げた」韓国兵士乱射脱走事件から見えた軍の暗部…徴兵制での壮絶いじめ、問題視される前近代性

蔓延するいじめ

 聯合ニュースによると、22日午前11時16分と、同日午前11時56分、さらに23日午前2時13分の3回、捜索部隊はイム兵長とみられる人物と接触していたというのだ。しかし3回ともイム兵長とみられる人物は「訓練兵だ」「敵味方識別帯を撮りに行く途中」「合い言葉を忘れた」などと言い訳して逃れたという。

 こうした事実が明らかになり、韓国陸軍には改めて批判が殺到した。韓国では過去、北朝鮮の兵士が武装したまま侵入し、銃撃戦となったことが幾度もある。民間人が北朝鮮兵と間違われて射殺されたことさえある。脱走兵1人に翻弄された今回の事件は、過去の教訓が何も生かされていないことを証明したようなものだ。

 ところでイム兵長が乱射し脱走した動機について、中央日報(電子版)などは、イム兵長が「同僚のいじめが原因」と供述したと報じた。イム兵長はやせていて頭髪が薄いという容姿をからかわれ、日常的に同僚から「ガイコツ」「痩せザル」などと呼ばれていた。事件当日、ノートに自分を嘲笑する悪口とガイコツの絵が描かれているのを見つけ、怒りに火が付いたという。

 こうした動機が明らかになるにつれ、韓国マスコミは徴兵制の暗部にもメスを入れ始めた。

 韓国では徴兵された若者の自殺が相次いでいる。その理由の一つに挙げられるのが、軍内での強烈ないじめやパワハラだ。7月31日に明らかになったユン一等兵の死亡事件がそれを示している。

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