韓国全土を震撼させた事件は、その背景の方が恐ろしかった。6月21日に1人の韓国陸軍兵士が同僚5人を射殺して逃亡。軍は大規模な捜索部隊を投入し、2日後に捕まえたが、この異常な事件は軍の「暗部」を次々と明るみに出した。撃たれた仲間を見捨て、見つけた逃亡兵を簡単に逃がし、あげくは同士討ち-。兵士1人を追うのにそんな行動をとった兵士たちの実態だ。さらに軍内部では日常的な暴力などいじめが横行し、今回の脱走事件の引き金になったとされ、韓国軍の前近代性やずさんな態勢が改めて問題視されている。
(岡田敏彦)
突然の反乱
事件は6月21日午後8時ごろに発生した。朝鮮日報(電子版)など現地マスコミによると、北朝鮮との軍事境界線に近い韓国江原道高城郡にある陸軍の見張り所近くで、イム兵長(23)が突然、同僚兵士に向かって手榴弾を投げつけたうえ、銃を乱射。兵士のうち5人が死亡し、7人が重軽傷を負った。イム兵長は小銃と実弾約60発を持ってそのまま逃走。軍は大規模な山狩りに乗り出した。
軍の同僚に向かって小銃を乱射という極めて異常な事件だが、その後の展開も異常で、韓国の軍社会全体の暗部をえぐり出す結果になった。
陸軍は大規模な追跡を展開したが、ソウル聯合ニュースによると、翌22日午後2時20分ごろ、陸軍部隊が江原道高城郡で逃走中の兵士と撃ち合い、小隊長(中尉)が負傷。銃撃現場近くには小学校もあり、危険な状況になったという。