ほんの1滴、痛くない血液検査 注射嫌いの女子大生が挑んだ「再発明」

開発中のアプリが動作するようになれば、まさに「自分の健康は自分の手で変える」を体現する時代にまた一歩近づくことになる。image: Theranos

--この技術はどの分野で大きな成果をあげられると見ていますか?

生殖能力検査などは良い例ですね。これまではおよそ2%2C000ドルが必要で、多くの人たちは自費で支払っています。生殖機能を調べるための数値を提供する検査ですが、なかには支払いができない女性もいるでしょう。その点、わたしたちの生殖能力検査は35ドルで済みます。これなら検査できないということはありませんし、妊娠までのプロセスに対応しやすくなり、ストレスも軽減されるでしょう。

--検査の精度を保証するにあたって、どのようなことをしていますか?

カギとなるのは、従来の検査工程においてエラーを招くデータの変動を最小限にすることですね。エラーの93%は、検査前工程で人が行う作業に起因しています。

--例えばどのようなものでしょう?

手動の遠心分離や、サンプルを分析するまでの時間などです。時間が経つと減衰率を考慮しなくてはなりませんから。

--では、どうやってそれらの潜在的なエラーを回避しているのですか?

検体の「取り扱いマニュアル」などがあるわけではありません。ピペットで「ナノテイナー(ごく微量のサンプルを入れる容器)」に入れる作業に従事する人はいませんし、手動でこなす工程もありません。採血が済んだら保冷箱に入れられ、すぐに分析工程に移ります。すべては中央検査機関で自動分析装置によって行われ、人間は介在しないのです。

--プロセスが改良されると、どのようにして人の命を救えるようになるのでしょうか?

時間の経過に合わせた検査の結果を表示するツールを開発したので、医師は患者の状態をデータの推移として見ることができるようになりました。現在まで、このようなデータの見方はされていません。知りたいのは「基準値内なのか、基準値外なのか」ではなく、「何が起こっているか」なのです。映画のひとコマを見せられただけでは物語の描写はできないけれど、数々のフレームを組み合わせると映画の展開が見えてくるようなものです。

--この技術は、そのほかのどのようなことに活用できますか?

わたしたちは、本当に長い時間をかけてこの技術を確立しました。最初にビジネスを持ちかけたのは製薬会社でしたが、わたしたちの分析データ取得がずいぶんと早かったお陰で、彼らもこの技術を基盤に臨床試験を行うことができたんです。臨床試験にはアダプティヴデザインと呼ばれる考え方がありますが、長い期間を待って薬の服用量を変えるといった従来の臨床方法とは対照的に、データに基づき患者への投与量をリアルタイムに、または、計画性をもって変えるといった方法をとれるようになりました。

--長い目で見ると、このテクノロジーはどのような影響を与えられると思いますか?

時間経過で変化する癌の徴候を見極める研究への貢献や、病気に対する早期介入への手助けになることを願っています。

--人々は自分の健康データを集めたり分析したりするのに慣れてくると思いますか?

誰も検査での経験をポジティヴに思う人なんかいないでしょう。でもそうであるべきなんです! その環境をつくり出すために必要なのは、医師が検査データを公開したあと、その数値に人々の関心を引きつけることです。なぜその検査が必要なのか、その結果が何を意味しているのかわからなければ、その経験をポジティヴなものとして受け止めることもできませんからね。

体重を健康の指標にする人たちの話を聞くと、頭を抱えたくなります。体重は生化学的なものを教えてはくれませんから。ですが、生活習慣の変化が血液データにあらわれてくると、本当にわくわくするんです。2型糖尿病のように、早期に病気の可能性を警告されれば、本当に病気になってしまう前に何らかの処置を施すことができますしね。検査をすることで体のことを理解し始め、自分自身を知り、食生活やライフスタイルを変化させ、人生を変えることができるようになるのです。

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