ほんの1滴、痛くない血液検査 注射嫌いの女子大生が挑んだ「再発明」

 痛くて、高価で、時間のかかる血液検査。それがたったの1滴の採血で済み、しかも安くて痛くない。さらに検査に時間もかからない。そんな血液検査がアメリカで広がろうとしている。血液検査のイノヴェイションは、注射嫌いの女子大生の思いつきからはじまった--。(『WIRED』Vol.12より転載)

エリザベス・ホームズは現在30歳。10年前にスタンフォード大学を中退し浮いた授業料で、ほんの1滴の血液で多様な結果を得られる検査を提供するTheranos社を設立した。『WIRED』日本版Vol.12では、進化めざましいヘルスケア分野の、最新ガジェットも一挙紹介している。

瀉血という言葉は、もはや死語なのかもしれない。しかしそれでも、時間はかかるし、高価で、効率が悪いままいつまで経っても進化しない血液検査に比べれば、まだましだ。

当時大学2年生だったエリザベス・ホームズは、この時代錯誤な血液検査方法を再発明し、広範囲にわたる超高速診断と予防医学の先駆者となる未来を思い描いていた。

それから10年が経ち、現在、ホームズは30歳。彼女はスタンフォード大学を中退し、払わずに済んだ授業料で自身の臨床検査会社Theranosを設立した。そして去る2013年の秋、カリフォルニア州パロアルトの本社近郊にあるウォルグリーン薬局に、彼女たちが手がけた革命的な血液検査サーヴィスがついに導入されることになった(ゆくゆくはアメリカ全土に検査施設を導入する計画だ)。

その検査に、採血管はいくつもいらない。検査項目ごとに異なる容器が必要だった従来の検査方法と違い、Theranosの提供する方法であれば、痛みの少ないピンプリック法(指先を小さな針で刺す方法)で得られるたった1滴の血液だけで済んでしまう。それだけでコレステロールのチェックから高度な遺伝子分析までを含む数百という検査を可能にし、より早く正確で、はるかに安価な血液検査を実現させたのだ。

このことが示唆する可能性は、はかり知れない。静脈を流れる情報への安易かつ安価なアクセスは、人々が自らの健康を顧みるまたとない窓口となる。次世代の診断方法は、癌、糖尿病、心臓病といった重い病気を回避させてくれるかもしれないのだ。

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