日本では再導入に対しての慎重論が少なくない。オオカミが人を襲ったらどうするのか、という心配に基づく反対だ。
「これは一番問題にならないことを問題視しているのです」と、丸山さんは説明する。野生のオオカミは人間を恐れて出合いを避ける。
ニホンオオカミは固有種なので海外からの導入は不適切だ、とする意見もあったが、残っている骨などのDNA分析から海外と同じハイイロオオカミの仲間であったことが判明しているという。
丸山さんは、シカの生態・保護・管理を専門とする研究者だが、ポーランドでの野生オオカミの目撃体験を機に、日本の自然保護にはオオカミの復活が欠かせないと考えるようになったという。5年後の1993年に日本オオカミ協会を設立した。 昨年のアンケートには1万5千人から回答が寄せられ、再導入反対14%に対し、賛成40%という結果を得ている。
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シカ害に悩まされる地域ではオオカミによる生態系回復への関心度が高い。大分県豊後大野市では橋本祐輔市長が「シカが特産品のシイタケ栽培に使う原木の再生新芽を食べるので、産業も森林生態も成り立たなくなるのではないか」と憂慮するほどの食害を受けている。