拉致再調査 再会待つ家族 大阪市の福山さん、八尾市の尾上さん

 日朝両政府が拉致被害者らの再調査に合意したことを受け、府内に住む特定失踪者家族の間でも、再調査の帰趨(きすう)に注目が高まっている。北朝鮮は今回、政府認定の未帰国の拉致被害者12人のほかに、拉致の疑いが排除できない特定失踪者にも対象を広げ、全面的に調べると約束した。娘は、息子は、きっと生きている-。残された家族はそう信じ、北朝鮮の答えを待っている。

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 平成3年11月3日、高校3年だった大阪市の福山ちあきさん=失踪当時(18)=は市営地下鉄の駅で友人と別れ、その後の足取りが分からなくなった。

 翌春には容器包装会社に就職が決まっていた。自宅にあった現金も手つかず。交際していた彼氏もおり、家出の理由は見当たらなかった。

 女子高生の謎の失踪-。そこに拉致の可能性が浮上したのは平成14年の小泉純一郎首相の訪朝後。母のはるみさん(62)=大阪市中央区=が特定失踪者問題調査会に相談したのがきっかけだ。調査会の判断は「拉致濃厚」だった。

 再調査の対象に特定失踪者が含まれることを聞いたとき、はるみさんは「やっと光が差した」と思ったという。「北朝鮮にいるのかいないのか。ずっと真実はどうなんだ、と悩み続けてきた」。

 今はただ、ちあきさんの生存を信じ、調査の行方を注視するだけだ。「今度こそ、今度こそ」。はるみさんは、そう繰り返した。

 昭和62年に失踪した八尾市の尾上民公乃(みこの)さん=当時(20)=も、特定失踪者問題調査会が「拉致濃厚」と判断した1人だ。

 同年6月6日未明、民公乃さんは大阪市内でスナックのアルバイトを終え、同僚女性の車に乗った。女性はミナミの路上に車を止めて友人のいるビルに立ち寄り、約30分後に戻ったが、すでに車はなく、民公乃さんの姿もなかった。

 丸1日たった翌7日朝、福岡市博多区の岸壁から海に転落した車が発見された。福岡県警が車を引きあげたが、車内にあったのは民公乃さんのイヤリングのみだった。

 何の手がかりもないまま月日は流れ、平成19年前後に北朝鮮にいるとの不確定情報が持ち上がった。

 「今は政府と北朝鮮を信頼するしかない」

 民公乃さんの父、支征(ささゆき)さん(72)の再調査への思いだ。拉致被害者の家族も、特定失踪者の家族も高齢化が進む。「今回がラストチャンス」との覚悟がある。支征さんは「どこの国にいても、娘が強く生きていると信じている」と声に力を込めた。

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