衝撃事件の核心

「かに道楽」中国人バイトはなぜ先輩調理師を刺したのか…「灰汁とるな!」にキレ、背景に浮かぶ日中「仕事観の決定的な違い」

 事件の構図は単純だが、背景には日本人労働者と中国人労働者の意識の違いも浮かび上がる。

 つまり、日本人なら耐えられるであろう上司からの多少の理不尽や小言も、中国人にはあまりに耐えがたい苦痛なのではないかということだ。過去にはこんな事件もあった。

 広島県江田島市のカキ養殖会社で昨年3月、中国人技能実習生の男が社長や従業員ら8人を次々と襲い、社長ら2人が死亡した事件が起きた。男はカキの殻から身を取り出す「打ち子」の仕事を任されていた。

 男は逮捕後、広島県警の調べに「日頃から社長に仕事が遅いなどと言われ、恨みを抱いていた」と供述。殺された社長は仕事に厳しい側面はあったが、男のことを「積極的に仕事する」と評価していたという。

 一体、なぜこのような感情の行き違いが生じるのか。

 民間企業に勤務していた当時、中国に赴任した経験もある近畿大経営学部の辻隆久教授(雇用調整)は「日本人と中国人の国民性は根本的に違う。雇う側がそれを認識しなければ、職場でトラブルが起きるのは当然だ」と指摘する。

 辻教授によると、中国人の仕事に向かう姿勢は個人主義的で、日本人のような協調性はない。さらに、明確な物言いを好み、曖昧さを許容しない。

 要するに、「見て覚えろ」や「察しろ」という日本的な指導法は、中国人にはまったく通用しない。中国人に必要なのは、むしろ日本人には敬遠されがちな明確な指示やビジョンなのだ。メンツを潰されるのを嫌うため、同僚の前での叱責も避ける必要がある。

 日本で働く外国人労働者数は25年10月現在で過去最高の約72万人。うち中国人は約30万人に上る。外国人労働者の受け入れが進む今、日本人労働者が異文化を理解する重要性は増している。

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