公判で検察側は、高被告の仕事が「鍋の盛りつけ」だったと指摘。灰汁取りは調理師が任される仕事だったとし、高被告に「被害者がアルバイトに鍋を触られるのを嫌うと分かっていたのなら、なぜ灰汁を取ったのか」と問いただした。
これに対し高被告は、以前にも同じような状況があり、鍋を無視していたら怒られたと主張。「灰汁取りは自分の仕事ではないけれど、緊急時だからした」と反論した。そして、事件を起こしたことを「申し訳ない」と反省しつつ、こんな本音ものぞかせた。
「助けたつもりなのに邪魔したと思われた。人間なら『ありがとう』と言うのが普通なのに…」
日本語流暢な苦学生
実は2人の間には以前から確執があった。
ある日、高被告に調理師が残業するよう命じた。高被告は腰を痛めていたこともあり、「定時に帰らせてほしい」と訴えたが、調理師は業務優先を理由に我慢するよう言い、口論になったという。
調理師は職人かたぎの厳しい人物だった。事件後もすぐ病院に行かず、包丁を刺された傷口に絆創膏を貼り、しばらく仕事を続けたほどだった。
口癖は「早くせえ」。高被告ら中国人アルバイトにも、調理技術や盛りつけ方を細かく指導した。高被告は公判で「(調理師は)自分も仕事が遅いくせに、私たちばかりせかすのが納得できなかった」と漏らした。
高被告は4年前に来日。専門学校で日本語を学んだ後、大阪府内の私立大学に進学した。成績優秀で、2年連続で授業料を減免されている。
公判では検察側や弁護側の質問の大半を、通訳を介さず日本語で返答。将来の夢を聞かれると、「神戸大に進学して学びたい。このまま学問を続けさせてほしい」と訴えた。
すでに公判は結審。検察側が「危険で悪質な犯行」として高被告に懲役4年を求刑する一方、弁護側は執行猶予を求めた。判決は6月19日に言い渡される。
「察しろ」はNG
バイトで生活費を稼ぐ苦学生が、口うるさい先輩へのストレスをため込み、一気に爆発させた-。