衝撃事件の核心

「外れ馬券は経費」連続勝訴40歳、それでも「追徴課税10億円・延滞税14・6%」の変わらぬ極貧悪夢

 競馬ファンの夢物語をかなえたはずの「神の馬券師」は、今も悪夢から覚めることができない。インターネットで大量購入した馬券の所得を申告せず、約5億7千万円を脱税したとして、元会社員の男性(40)が所得税法違反罪に問われた事件は、大阪高裁が5月9日、男性を有罪としながら、外れ馬券を含むすべての馬券購入費を経費と認め、脱税額を約5千万円に減額した1審大阪地裁判決を支持、検察側の控訴を棄却した。再び被告側の「実質勝訴」判決だった。競馬ファンからは安堵(あんど)の声も漏れるが、刑事裁判で連勝したはずの男性は約10億円の追徴課税を背負ったまま。職や預貯金を失い極貧生活に陥り、競馬にも手を出せていない。検察側が最高裁に上告した上、課税処分取り消しを求めた行政訴訟も決着しておらず、真の解決にはまだ長い道のりが続く。

失職も毎月数万円納税

 「裁判所には常識的な判断をしていただき大変嬉しい。一日も早く安心して暮らしたい」

 高裁判決後の記者会見で、弁護人を務める中村和洋弁護士(大阪弁護士会)が男性のコメントを読み上げた。その内容からは、1、2審を経ても厳しい境遇から抜け出せない男性の苦悩がにじみ出ていた。

 男性は平成16年、約100万円を元手に競馬専用の口座を開設。以来、勝ち馬予想ソフトを駆使してネット上で馬券を大量購入し、順調に資金を増やし続けた。週末ごとに全国の中央競馬のほぼ全レースで馬券を購入し、多い時には1日1千通りを超えた。一度も追加の入金をすることなく、19年には年間の配当額が1億円を上回った。

 しかし、多額の配当益を株や投資信託につぎこんだ結果、リーマンショックなどの影響を受け20年には約7千万円の損失を出す。これに追い打ちをかけたのが大阪国税局査察部、通称「マルサ」による強制調査だった。

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