時代映す、漁師の服飾文化 白浜海洋美術館「万祝」200着 千葉

 房総の漁師が大漁の年に網元から贈られた衣装を「万祝(まいわい)」といい、鮮やかな色使いと迫力ある絵柄が特徴だ。白浜海洋美術館(南房総市白浜町)には収集した万祝が200着も保存されており、訪れる人に驚きと安らぎを与えている。柳善夫館長(64)は来館者に声をかけて、貴重な文化を今に伝えている。

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 美術館は房総半島最南端の野島埼灯台のすぐ近く。平屋の和風建築を入ると展示品が目に入る。

 「万祝は江戸時代、房総で生まれ、戦前までありました。静岡から宮城までの太平洋岸で広がりました。ボーナスの意味があり、配られるとそれを着て正月2日から三日三晩酒盛りをしたそうです」

 万祝は丈の長いはんてんのよう。実際に着ることができる一着もある。紺の綿の布を縫い合わせ、絵は背中に描かれる。

 一人の漁師が手にすることができるのは生涯に2、3着だったという。絵柄はおめでたい鶴や亀、宝船、漁の対象であるマグロ、クジラなど工夫がこらされる。

 柳さんは「展示はしていませんが、日露戦争の勝利を祝ったものもあります」という。「精神一到」と赤い字が書かれたものもあった。精神を集中することを説いたもので、昭和10年代の作品といい、「時代を映していますね」と話す。

 他にも明治、大正、昭和のそれぞれの時期に漁師たちがそろって万祝を着た写真がある。船首飾りと呼ばれる木製の彫刻、漁師が網を手入れするための小刀や入れ物、船の金庫にあたる「船箪笥(だんす)」、江戸時代の輸送船の旗、漁にまつわる民芸品なども飾られる。

 柳さんの両親が「海洋国日本」の思いをかけて近隣の漁師らから収集、昭和40年に私設美術館として開いた。万祝の代わりにスーツやジャンパーが配られ、文化伝承に危機感を抱いたのがきっかけだった。

 後を継いだ柳さんは「万祝は漁業の世界的な服飾文化の中でも珍しいもの。来年は開館50周年なのでイベントを考えている」と話す。ただ、手作り美術館でも運営費はかかり「サポートしてほしい」とも呼びかけている。

 入館料大人500円など。木曜休館(祝日などを除く)。問い合わせは(電)0470・38・4551。

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