主張

美味しんぼ 独善で風評を助長するな

 放射性物質の健康への影響をめぐって「週刊ビッグコミックスピリッツ」(小学館)の連載漫画「美味(おい)しんぼ」の描写が議論を呼んでいる。

 東京電力福島第1原発を訪問後に主人公が鼻血を出す場面や、福島県双葉町前町長が実名で「今の福島に住んではいけない」と発言する姿が描かれている。

 福島県民の不安をあおり、風評や偏見を助長するものだ。

 福島県は国連科学委員会や医療機関などの専門機関と連携して全県民を対象に健康調査を実施している。これまでに放射性物質に起因する直接的な健康被害が確認された例はない。

 低線量被曝(ひばく)の影響に関しては未解明な部分もあるが、被曝線量の高い放射線技師や宇宙飛行士でも、短期間で健康への顕著な影響が出るわけではない。

 ところが、「美味しんぼ」では震災がれきを受け入れた大阪市の焼却場近くの住民について、実在する専門家が「放射線だけの影響と断定はできないが、目や呼吸器系の症状が出ている」と語る場面がある。放射線と健康被害の因果関係を示唆する内容だ。

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