【衝撃事件の核心】大阪高裁が猶予認定した「前頭側頭型認知症」…万引常習の理由は「クレプトマニア」だけでない(3/4ページ) - 産経ニュース

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衝撃事件の核心

大阪高裁が猶予認定した「前頭側頭型認知症」…万引常習の理由は「クレプトマニア」だけでない

 だが、神戸地裁明石支部は昨年10月の判決で完全責任能力を認め、懲役7月(求刑懲役10月)の実刑を言い渡した。

 実刑の理由は何なのか。

 専門医の意見書などでは、前頭側頭型認知症の特徴として、罪悪感の欠如が挙げられていたが、犯行状況などから判決は「罪悪感が認められる」と述べた。

 というのも、女性はスーパーで棚から食品を取り、一度買い物かごに入れてから持参の手提げ袋に隠し、代金を払わずに外に出た。また、捜査段階や公判で「悪いことをした」と供述していたのだ。

 判決は「認知症の程度はさしたるものではない」として、責任能力に問題はなかったと認定。「服役すると認知症が悪化する恐れがあるが、実刑はやむを得ない」と判断した。

刑罰と治療のバランス

 弁護側が控訴し、迎えた今年3月の大阪高裁判決。証拠は1審と同じだったが、前頭側頭型認知症に対する評価が異なっていた。

 女性が入院していた病院の記録には「食品などをため込む」「自分勝手な話を繰り返す」「私物の整理ができない」といった内容が残されていた。

 高裁判決はこうした記載が、女性と面談した専門医が指摘する前頭側頭型認知症の症状と合致することから、「認知症の影響で自制力が低下し、犯行に及んだ可能性を否定できない」と指摘した。

 さらに、女性が1審判決後、治療に向けて専門病院からケアハウスに移ったことなど再犯防止に取り組んでいる点を重視し、懲役10月、保護観察付き執行猶予4年の判決を言い渡した。検察側は上告せず、高裁判決は確定した。

 福井さんは「医療関係者ですら前頭側頭型認知症を知らない人が多く、不合理な盗みを繰り返す人は大抵クレプトマニアと診断される」と現状を嘆く。「前頭側頭型認知症と気づかれないので裁判でも争点にならない。司法関係者の間でも理解が進んでおらず、こういった症状に対する意識の高い弁護人がもっと必要だ」とも訴える。