【衝撃事件の核心】大阪高裁が猶予認定した「前頭側頭型認知症」…万引常習の理由は「クレプトマニア」だけでない(2/4ページ) - 産経ニュース

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衝撃事件の核心

大阪高裁が猶予認定した「前頭側頭型認知症」…万引常習の理由は「クレプトマニア」だけでない

 病院での診断を踏まえ、弁護人は1審で、クレプトマニアと摂食障害を主張した。だが、被告人質問で弁護人は違和感を覚えた。女性が法廷で「ご飯を食べても1時間後にお腹がグーと鳴る」と訴えたからだ。

 弁護人は当時の印象をこう説明する。

 「逮捕直後から話がかみ合わず、女性の性格の問題かと思っていた。しかし、お腹が鳴るという話を聞いたとき、高齢でもあって認知症ではないかとの疑いを持った」

 女性はその後、脳の画像診断を受け、前頭葉と側頭葉に萎縮がみられる「前頭側頭型認知症」と判定された。万引を繰り返すのは、この認知症が1次的要因だとする専門医の意見書が1審の公判に出された。

高揚感か、無関心か

 「前頭側頭型認知症」とはどのような症状か。

 クレプトマニアの鑑定などを手がける精神科医、福井裕輝さん(44)によると、アルツハイマーと異なり、記憶はある程度しっかりしているが、万引など「反社会的行動」を繰り返すケースが多いという。

 寝たきりや1人暮らしなど刺激のない生活を送ると症状が悪化しがちで、根本的な治療薬はない。グループホームなどで人と話したり、歌を一緒に歌ったりすることで進行を遅らせるのが一般的だ。

 クレプトマニアとの違いは動機や心理状態にある。福井さんによると、クレプトマニアは依存症で、10代後半の未成年にもみられるという。物を盗む直前の高揚感にとりつかれ、犯行後は強い罪悪感を覚えるが、一定期間を過ぎると薄れ、また手を染めてしまう。

 一方、前頭側頭型認知症は窃盗への衝動によるのではなく、「無関心」が動機の中心となるようだ。端的に言えば「よく分からないが、盗んだ」という話で、本人も周囲にうまく説明できない。発症年齢が早くても40~50代というのも、クレプトマニアと異なる。

悪化の恐れ…でも実刑

 弁護人は1審の途中から犯行の要因をクレプトマニアから前頭側頭型認知症に切り替え、責任能力も限定的だったと争った。