正論

「国民の憲法」1年 広がる奇妙な改正反対論を正す

 出処は弁護士の伊藤真氏らの主張のようで、同氏の『憲法は誰のもの?--自民党改憲案の検証』(岩波ブックレット、2013年)は、「憲法とは、人権を守るために国家権力を縛るための法です」とし、「だからこそ、現行憲法99条は、公務員だけに『憲法尊重擁護義務』を課しています」としながら、「その半面、現行憲法はそれ(憲法尊重擁護義務)を国民には課しません。国民はむしろ『憲法を守らせる側』にいるからです。国民は憲法を守らせる側であって、守る側ではない、というのが、立憲主義なのです」と述べている。同書は表紙に「立憲主義を見失った改憲論議は、危うい」とも書いている。

 ≪国民に尊重・擁護義務あり≫

 しかし、東大法学部教員による解説書(『註解日本国憲法 下』有斐閣、1954年)は、憲法99条が国民の憲法尊重擁護義務を明記していない点について、「国民のこの憲法を遵守する義務を否定したのでないことは、言を俟(ま)たない」と指摘し、「(憲法の)制定者であり、主権者である国民が、国家の根本法たる憲法を尊重し擁護しなければならないことは、理の当然であって、自ら最高法規として定立したものを、制定者自身が、破壊することを予想するのは、自殺行為といわねばならないであろう」と断じている。

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