英国では2007年、企業の刑事責任を問うための要件を緩和した「法人故殺(こさつ)法」が制定された。社長らが事故を予測できなかったとしても企業に上限のない罰金を科すことができるのが特徴だ。制定後、事故件数も減少したとされ、日本でも抑止効果を期待する声が少なくない。
導入には課題も
法人罰が導入されれば、要件次第では福知山線脱線のようなケースで鉄道事業者の過失が認定される可能性も出てくる。川崎教授は「企業処罰の立法化を本格的に検討すべきだ」と訴える。
一方、甲南大法科大学院の園田寿教授(刑事法)は「法人罰を導入しても幹部の懐は痛まない」として慎重だ。事故原因の究明をかえって妨げてしまうとの意見もあり、園田教授は「法人に罰金を科しても保険で補填(ほてん)される可能性もある。法人処罰導入前に個人の刑事責任と問える制度づくりが必要」と話す。
法務省では13年前から刑事局内で法人罰の検討が進められているが、「法人に対してどのような刑罰が適当なのか、故意、過失をどう問うべきか非常に難しい問題」として結論は出ていない。